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安藤忠雄さんとの出会い

直島 旅館 ろ霞 安藤忠雄さんとの出会いから始まったストーリー

「直島で旅館をやるなら、安藤さんを紹介しようか?」と言ってくれたのは私の大先輩でした。私が今までの人生で「世界の安藤忠雄と会える」なんて想像したことがあると思いますか?ですから、それはカミナリに打たれるような話でした。

そんな非現実的な話の翌日です。家にいると電話がなり、その向こうは安藤さんでした。

安藤さんはとても優しい口調でした。

「図面は見せてもらったよ。これは二階建て?とてもいいと思うよ」

そんな内容だったと思います。

「今度、直島でパーティーがあるから招待するよ。その時ゆっくり話そう」

そう言って、電話は終わったと思います。

本当に安藤さんと会う、どんな話をすればいいのか、何を着ていけばいいのか、そんな事を考える事からでした。

実際、一緒に行くデザイナーと、きっと安藤さんは黒の上下のスーツなんじゃないか、僕らも、同じように黒の上下で行ったらどうだろう、などと相談しました。こんなに舞い上がった事は、ここ数年なかったかもしれません。

パーティー当日、安藤さんは真っ赤なジャケットで黒の上下ではありませんでしたが、とても穏やかな雰囲気で会場にいらっしゃいました。そして、会場に着いたばかりの私たちを見つけて、安藤さんの方から近づいて来てくださいました。

安藤さんに、もういちど図面を見てもらい。アドバイスを頂きました。

そして、ベネッセの社長を紹介していただき、

「彼は僕らと一緒に35年間ここを作り上げて来た人間だから、分からない事は彼に聞いてください」

と言ってくださいました。

もし、安藤さんがベネッセの社長を紹介してくださっていなかったら、私はここまで辿り着けてはいなかったかも知れません。この旅館を作るのに、何度かベネッセさんともミーティングをしました。

福武総一郎さんが、どうしてここに美術館を作ったのか。そんな話から聞かせて頂きました。

福武さんが直島にベネッセを作ったのは、35年以上前、福武さんが瀬戸内海でクルージングをしている時に、こんなに美しい島々が続く場所を、破壊してはいけない、守っていかなくてはならないと思い、安藤さんと一緒に、禿山だった直島に木を植えるところから始めました。

島の人の生活を守ること、島の人の幸せになるようにと、20年以上の歳月をかけて時間をかけて進めていき、2010年初めての瀬戸内国際芸術祭が開催されることとなりました。

私は、そんな話をベネッセの役員の方から聞かせて頂き、この世の中で一番すごい人は福武総一郎さんなんじゃないかと思いました。そして、私も福武さんの思いを引き継いで、直島で旅館を始めることを決意しました。

安藤さんとの出会いは、この直島の始まりから、ずっとこの先続く未来の直島そのものとの出会いのような出来事でした。

A&C株式会社

代表取締役 佐々木慎太郎