10月1日から建設工事に着工いたしました。
ろ霞の建設を発表してから、
色々な方からお声を掛けていただけるようになりました。
それほど、直島という場所の魅力がすごいのだと思います。
しかし、それは一部の人の話です。
というのも、3年前、最初に旅館を建てたいと言った時は、
当時の僕の周りの人たちは、今とは全く違う反応でした。
今日は、お金の話です。
当時は岡山の真備の大洪水の翌年、
今とは、少し色々と感覚が違ったように思い出されます。
当時、岡山のどこかに洪水が来たというニュースを見て、
多くの方が、湯郷温泉への旅行も取りやめ、
2ヶ月ほど全くお客様が来ない時期がありました。
本体の季譜の里もその影響を受け、2年間赤字続きでした。
今、みんなが給料をもらっている雇用調整助成金はすでにあったみたいですが、
当時は誰も知りませんでしたね。
銀行は決算書を見て判断するので、
僕が直島に旅館を建てたいと言った時、どの銀行にも鼻で笑われました。
その時、「直島って、本当に観光客くるんですか?」と本気で言われてしまいました。
どの銀行からもお金が借りられない状況で、
最初はクラウドファンディングを思いついたりしました。
しかし、昨今、話題のクラウドファンディングですが、
一番多く支援を集めた人でも最高額は1億五千万円だそうです。
当時僕は2億円を集めようとしていました。
それを本当に自分がやってのけられるんだろうか。
会員制にして、会員からお金を集めて建てようか。
計算してみると、そんなに簡単そうな事ではありませんでした。
また、実際、計画が始まると2億には収まらず、
どうしたらいいものか、試行錯誤の毎日でした。
まずはレストランだけでもオープンできればいいんじゃないか。
もっと違う表現で銀行にアプローチしたら変わるだろうか。
頑張って頭を柔軟にして、夢の実現に少しでも近づけるようと考えました。
そして、ろ霞が出来るまで、
沢山の人に会い、沢山の人にお願いし、
沢山の人に助けてもらいました。
一人一人の話を始めるとキリがありませんが、
いつかみんなを紹介したいと思っています。
たった一人の人が賛同してくれることから始まりました。
ベネッセさんにも、本当にお世話になりました。
一人、一人、と協力者が増えるうちに、
最後は、銀行の支店長も直島について勉強してくれはじめ、
実際に何度も何人も直島に視察に行ってくれて、
最後は、融資を決めてくれました。
工事を着工して、今思う事があります。
もし、最初から十分にお金があったら、
きっとこんなに面白い旅館にはなっていなかっただろう。
きっと、過去に見てきた旅館のいいとこ取りをして、
その時の僕の知識でいいと思う素材を集めて、
自分だけがカッコいいと思う、どこにでもある普通の旅館になっていただろうと。
このろ霞が出来るまでに得たものは、
形に残るのは旅館そのものだけだけど、
見えないものとして、様々な経験だったり、
人との繋がりや縁であったり、
その縁のお陰でこれから始まるこれからの未来だったりと、
僕の人生をとても豊かにしてくれた、
何にも代えがたいものだったと思います。
A&C株式会社
代表取締役 佐々木慎太郎